十六歳の夏、俺はコンパネを円形にしたスキムボードに夢中になり砂浜を走り回っている時、初めて白浜で波乗りを見た。やりたくてもサーフボードはその当時とても高価な物で、波乗りなんてやれる気も起きなかった。しかし、次の夏、友達の薦めもあり白浜に貸しボード屋が現れ、そこに手伝いとして働く事になった。鉄骨の円形のテントで、夏は寝泊まりが出来てそのテントで夏の終りまで働き夜明けから日没まで波乗り三昧で過ごした。ロングボードしか無い時代で、最低でも膝位はあり毎日が夢の様な楽しい日々を送った。ここから俺と波乗りの長い付き合いが始まった。
ロングボードの時代もボトムターンと言うテクニックはあったが、アップアンドダウンでその間直線的にウォーキングをしながらノーズに寄ったり、後ずさりしてセンターでスピードを上げテールに戻り方向を変える、といった動きが当時は主だった。ロングでもボトムターンは大事な動きだったがその二年後位から板が急に短くなり始め、レールをフェイス側に強く寝かせる事が可能になりボードのスピードが増した。その当時はシングルフィンしかなく、フェイスでターンをするとフィンがフェイスから抜けてしまうので増々ボトムターンが重要だった。なお今ではビーチブレイクは勿論、リーフブレイクではなおさらグッドなボトムターンが必要で、その波を乗り切るか、その波にキャッチされるかいなかはそのボトムターンで決まる。四十九年目に入るがボトムターンは簡単ではない。
この延長線上に行くのがリッピングとかオフザトップとも言うテクニックだろう。アップアンドダウンをしている内にスピードが増して波の上に板が飛び出してコントロールが出来なくなり、何回もトライして波のトップで素早く切り返している内に波の力を利用して返す事を覚えた。このフォトのリップはトラックが出てなくてどうかと思うが、二十五年以上は過ぎている。当時の俺ではこの様なスタイルだったんだろう。今は板の性能も良く、若い人はスタイルも良くスピードに乗った波乗りを見せている。波乗りを長年やって来たが海に入る度に新鮮に感じ楽しい。